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お便り
2016年06月13日 (月)  

編集者コラム vol.1 真田丸の「沼田」

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「うーん、こう来たか、、」
真田丸22話「裁定」で大きく動いた「沼田城」を巡る真田と北条の争い。真田からは幸村(信繁)、北条からは江雪斎、徳川からは本多信忠が集められた名代同士の対決。実に見応えがありましたね。ちなみに板部岡江雪斎は今回の放送で初めて知ったので、少し調べてみると北条家の「外交僧」とのこと。武田信玄死去の際も、その後の織田信長との同盟の際も、本能寺の辺の後の徳川との和睦交渉北条の際も、北条の名代としてみーんな彼が行ってたんですね。昔のお坊様の仕事は本当に多岐にわたってたんですね。全ては無意味な戦争を防ぐためという粋な心意気と共にすでにファンになりました。

北条氏政もしくは氏直が秀吉の元に上洛することが前提で、沼田城を含む上州の領土の2/3を北条、名胡桃城を含む残り1/3を真田が治めるという形で豊臣秀吉が裁定した進歩的且つ寛容な裁定した「真田 VS 北条」の諍い。
これは史実に沿っているので「太平記」も「真田丸」も同じ。「真田丸」における北条による名胡桃城の奪取は、北条家臣で沼田城の城代「猪俣邦憲(いのまた くにのり)」による単独行動として描かれました。

これが「真田太平記」だと現実的な時勢(強大な威容を手にいれた秀吉の力)を理解できずに従えない北条氏政を潰すために、偽の書面とともに忍びの者を暗躍させた「秀吉」の陰謀だと描かれています。秀吉の手により北条に送り込まれていた絵師「住吉慶春」こと甲賀忍び「酒巻才蔵」が、偽の文書を沼田の猪俣邦憲に届ける道中で出会ったのは、自身の恩人「馬杉市蔵」の娘であり真田が誇る諜報部隊「草のもの」の女忍び「お江」。

沼田城に着いた慶春から渡された北条氏政の筆で書かれた指示書(偽物)を読んだ猪俣邦憲は、さっそく名胡桃城の奪取に取り掛かります。一方名胡桃城では真田昌幸からの招集指示書(偽物)を受け取った城代「鈴木主水」が急ぎ城を出発しています。上田へ向かう途中の「岩櫃城」に寄った際に、真田家の重臣「矢沢頼綱」が「この文書は偽物だ」と看破して急ぎ鈴木主水は名胡桃城へ引き返すが時すでに遅し。

北条側に寝返った主水の部下「中山九郎兵衛」の手引きで陥落した名胡桃城を前に主水は自らの責任を負って自害を決めます。主水の妻と息子「小太郎」は恐らく城内で人質となっていること、そのうち岩櫃や上田から援軍が来るだろうこと。なんとか思い留まってもいたい部下たちの必死の説得に対して主水はこう言い放ちます「なればこそ、死ぬるのじゃ」。武士が過ちを償うただ一つの方法は、死であることを身を持って息子に教えること。だからこそ自分は息子の個々の中で生き続けるという死に様。この場面は個人的に鳥肌ものに大好きなシーンの一つです。

慶春がお江に伝えた秀吉の陰謀を知った真田昌幸がとった決断は、真田全体の生き残りのために、名胡桃城奪回の援軍をあえて送り込まず、最も信頼する部下の一人で名胡桃城の城主「鈴木主水」を見殺しにするという非情なものでした。激昂して北条と戦わないことで、北条が一方的に秀吉の裁定を破棄したことを際立たせたのです。小説では、冷静に先を読む策士としての自分と、人としての情の厚さを兼ね備えた自分が葛藤する昌幸の苦悩が重厚に描かれていています。

これほど、クールで熱い沼田を巡る真田と北条のエピソードですが、大阪で秀吉の側にいる信繁が主役の「真田丸」では、名胡桃城奪回は台詞だけでさらっと終わってしまいました。劇中の台詞で「沼田」「名胡桃」が連発したり、本編終了後の真田丸紀行で名胡桃城が映し出されましたが、沼田や水上エリアにもよく出張する自分としてはけっこう寂しかったです。それでも真田丸面白くなってきましたね。圧倒的な大群を従えた秀吉率いる北条征伐のシーンが始まると、絶対に小田原城に行って(攻めて?)しまいそうです。

※写真は大江戸博物館で開催の「真田丸展」で購入した「六文銭落雁」

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編集者コラムとは?!
さなだんごの旅制作委員会のカメラマン兼コピーライターが、大好きな「真田」をネタに語るコラム。池波正太郎氏ファンである彼は、群馬や長野、三重など日本各地へ出張へ行くことが多く、いつの間にか歴史好きに。ゆかりの地を巡る旅の様子やNHK大河ドラマ「真田丸」を見て思ったことなど、彼独自の目線で語っていきます。